パラメトリックスピーカーとは何か
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超音波を出すことで高い指向性(超指向性)を実現したパラメトリックスピーカー。技術としては50年以上も前からありますが、どのような聞こえ方なのか、どのような場面に活用できるのかよくわからない方もいるのではないでしょうか。本記事では、パラメトリックスピーカーの性能やお勧めのスピーカーもご紹介しますので、パラメトリックスピーカーの購入を検討している方はぜひスピーカー選びの参考にしてください。
パラメトリックスピーカーとは?音の聞こえ方や向いている人を解説
パラメトリックスピーカーとは何か
パラメトリックスピーカーは、超音波を使って音を発生させることにより、レーザービームのように音が伝わる技術を搭載した超指向性スピーカーのことを指します。通常、音は同心円上に広がる性質をもっていますが、パラメトリックスピーカーから出た音は広がらずに、直線的に音が飛んでいくという性質があります。例えば、アミューズメントパークや観光施設、イベント会場などで、ある場所に立った時にだけ音が聞こえるという体験をした方もいるのではないでしょうか。このように、ある特定の範囲にだけ音を伝えることができるのがパラメトリックスピーカーです。なお、空中に出力された音や電波の伝わる強さが、方向によって異なる性質を「指向性」といいます。この指向性が特に狭くなっているものを超指向性と呼びます。
パラメトリックスピーカーの歴史は、1970年の大阪万博で松下電器が最初のパラメトリックスピーカーを発表したことに遡ります。以降、盛んに技術開発が行われ、商業施設、アミューズメントパーク、博物館や美術館等の公共施設など、様々な場所・シーンで使用されるスピーカーとして普及するようになりました。さらに、パラメトリックスピーカーの技術を応用することで、音響のホログラムを実現するための技術、害獣忌避のための技術などとして活用されることが期待されています。このように、パラメトリックスピーカーは、エンターテイメントやビジネスなどの幅広い分野で有効な技術として注目を集めています。
どんな風に聞こえるのか
超音波で音を発生させるパラメトリックスピーカーは、距離による音の減衰が少ないという特徴があります。そのため、スピーカーによっては100m離れた場所に居ても、まるで耳元で音が鳴っているかのようなクリアな音を届けることが可能です。ただし、会話などの音声を聞き取るには十分な能力がありますが、オーディオスピーカーのような幅広い音域を再現することが難しく、ハイファイ・高音質で音楽を聴くという用途には向いていません。
パラメトリックスピーカーから出た音は、基本的には特定の範囲でしか聞き取ることはできません。しかし、音自体は壁や窓に反射するため、音を出す方向や環境によっては音が反響してしまうことがあります。そのため、狭い室内で使用したり、壁や窓に向けて使用した場合には、音漏れのような状態になって音が聞こえてくることがあります。あえて壁に反射させてまるで壁から音が聞こえてくるかのようにするアイディアもありますので、超指向性という特性を生かせるようにスピーカーの設置場所や向きに注意が必要です。
どんな人たちに向いているか
パラメトリックスピーカーは、ある特定の範囲にしか音が聞こえないという性質があります。そのため、例えば、以下のような人たちに向いています。
1. 美術館、博物館、図書館などで働く人
なるべく静かな環境を維持したいけれど、特定の場所で音声案内を導入したい人に向いています。例えば、美術館や博物館で特定の展示物の前だけにナレーションを流したり、図書館の特定の場所だけに音声案内を流したりすることに役立ちます。
2. 駅や大型商業施設などで働く人
パラメトリックスピーカーは、雑音が多い場所にも向いているスピーカーです。通常のスピーカーだと音が混ざってしまうような場所でも、音が拡散しないパラメトリックスピーカーならクリアな音を届けることが可能です。例えば、駅の音声案内や商業施設のサイネージなどの前での活用が考えられます。
3. テレワークをしている人
テレワーク中にオンラインミーティングをする人にも向いているスピーカーです。短距離型のパラメトリックスピーカーをBluetoothでパソコンと接続することで、イヤホンを使用しなくても周囲を気にせずオンラインミーティングをすることができます。同様に、イヤホンなしで音楽を楽しむこともできます。
4. アミューズメントパークなどで働く人
お化け屋敷のある特定の場所にだけ音を鳴らしたい、3D映像と組み合わせて臨場感のある音を表現したいなど、パラメトリックスピーカーはエンターテイメントにも効果的です。その他にも、アトラクションのエントランスだけ音声案内を流すなど、様々な有効な活用方法があります。
お勧めしたいパラメトリックスピーカー
パラメトリックスピーカーは、寸法や質量、超音波の周波数、出力レベル、指向性レベルなど、製品によって様々な違いがあります。各スピーカーは想定される設置場所に合わせたスペックで製造されているため、購入前にどのような場所を想定した製品かを確認しておきましょう。
クラリエル Clarielle(JDS-U36)
クラリエルは、株式会社グローバルアライアンスの長距離での使用を想定した超指向性スピーカーです。質量は0.5kgと軽量で、寸法(W×D×H)も312mm×161mm×36mmとコンパクト。「まるでヘッドホンのようなスピーカー」というキャッチフレーズの通り、100m先までクリアな音を届けることができます。なお、2023年5月時点参考価格22,0000円(税込)~です。 また、短距離用にエスレイ SRAY (CF-S100)という製品もあり、テレワーク用スピーカーなどとして活用できます。
audfly mini
audfly miniは、株式会社HSS Japanの小型超指向性スピーカーです。スピーカーの外寸が170mmx70mmx40mmと非常にコンパクトで、ランニングマシンやATMなどの狭い場所での設置に向いています。超指向性スピーカーのため、設置位置を約30cmずらすだけで音が混ざりません。音域が確保されているため、音楽やナレーションなどの幅広いコンテンツに対応可能です。狭い範囲に複数の音を混在させたい場合にお勧めのパラメトリックスピーカーです。なお、より供給出力が高いスタンダードモデルのaudflyという製品もあります。
パラメトリックスピーカーで、新たな音響効果を実現しよう
パラメトリックスピーカーは、超音波で音を発生させることにより超指向性を実現したスピーカーです。通常のスピーカーのように音が広がらないため、静かな場所や雑音の多い場所、狭いスペースなど、様々な場所で有効な活用方法があります。カスタマイズ性も高いため、アイディア次第で設置場所に合った新たな音響効果を実現することができるスピーカーになるでしょう。
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