景観を壊さないシーリングスピーカーのメリットとデメリット
目次
景観を重視したい空間で、音響設備の選定に悩んでいませんか?
一般的なスピーカーは設置すると目立ちやすく、空間の美しさを損なうことがあります。しかし天井に埋め込む「シーリングスピーカー」は、デザイン性と機能性を両立する優れた選択肢です。
本記事では、シーリングスピーカーの基本的な仕組みやメリット・デメリット、選び方のポイントについて解説し、さらにおすすめ製品や導入事例まで紹介します。
オフィスや商業施設、公共スペースなど、景観と音響のバランスを重視したい方にとって必見の内容ですので、ぜひ参考にしてみてください。
1.シーリングスピーカーとは
景観を大切にしたい空間で、音響設備の選択肢として注目を集めているのが「シーリングスピーカー」です。このスピーカーは天井に埋め込む形で設置され、見た目に目立ちにくく、洗練された空間を実現します。
オフィスや商業施設、公共空間など、デザイン性を求める場所に最適です。
ここでは、シーリングスピーカーの基本的な特徴やメリット・デメリット、そして景観を重視する場合の選択肢として「コラムスピーカー」との比較について解説します。
シーリングスピーカーの定義と仕組み
シーリングスピーカーとは、天井に埋め込む形で設置されるスピーカーのことです。そのため「インシーリングスピーカー」とも呼ばれることがあります。
一般的なスピーカーは床や壁に置かれるのが一般的ですが、シーリングスピーカーは天井に一体化する形で取り付けられるため、空間全体がすっきりとした印象になります。
また、音響面でも優れた特徴があります。
音を全方向に均一に広げる設計が多く、広い空間でも快適な音響を提供可能です。
音の振動が天井内で吸収されやすくなるため、部屋全体でバランスの良い音を出すことができます。
さらに防水・防塵性を備えたモデルもあり、屋内だけでなく半屋外の施設や浴室などでも利用できる点が魅力です。
例えば屋外プールの更衣室やガーデンカフェの音響設備としても採用されています。
シーリングスピーカーのメリット
シーリングスピーカーの最大の魅力は、景観にほとんど影響を与えない点です。美しい空間デザインを損なわずに設置できるため、建築物やインテリアの統一感を保つことができます。
また、他にも以下のようなメリットがあります。
景観を損なわないデザイン性
天井に埋め込むため視覚的に目立たず、空間全体が洗練された印象になります。
特にデザイン性が重視される高級施設や商業空間で重宝されています。
音の広がりが優れている
全方向に均等に音が広がる設計のため、大勢の人が集まる場所でも快適な音響環境を提供できます。
音のムラが少ないため、どの場所にいても同じ音を聞くことができます。
安全性が高い
壁や床にスピーカーを設置する場合と異なってスペースを取らず、設置物が倒れたり壊れたりするリスクがありません。特に公共施設や子どもが多い場所では、この点が評価されています。
省スペース設計
床や壁を使わないため、限られたスペースを最大限に活用できます。オフィスや店舗などで他の設備を邪魔しないのも利点です。
シーリングスピーカーのデメリット
シーリングスピーカーには多くのメリットがありますが、導入にあたって注意すべき点もあります。
取り付けの手間と費用
天井への埋め込み作業が必要なため、専門業者に依頼するケースがほとんどです。そのため、取り付け工事費用が追加でかかることがほとんどです。
初期費用が高い
一般的な据え置き型スピーカーと比べて製品そのものや設置にかかるコストが高めです。
特に高品質な音響を求める場合、コストはさらに上がることがあります。
設置後の調整が難しい
天井に固定されるため、設置後に音の向きや配置を変更するのが困難です。天井の工事も必須となるため、設置前の設計が重要です。
修理やメンテナンスが手間
天井内部に設置されているため、万が一故障した際には取り外し作業が必要になります。これも専門業者のサポートを依頼することが多く、手間が発生してしまいます。
景観を崩さないスピーカーとしての選択肢:コラムスピーカーとの比較
シーリングスピーカー以外にも、景観に配慮したスピーカーとして「コラムスピーカー」があります。コラムスピーカーは縦に細長い形状が特徴で、スタンドなしで設置することができます。
特に天井の加工が難しい場合や、施工費用を抑えたいときの代替案として検討されます。
シーリングスピーカー | コラムスピーカー | |
形状 | ||
設置場所 | 天井に埋め込む | 床に置く |
景観への影響 | 天井と一体化するため目立たない | スリムで省スペース |
配線 | 天井裏に隠す | 床に這わせる |
音響性能 | 全方向に均一な音響を提供 | 指向性が高く、音を特定の方向に届けやすい |
設置の手間 | 天井の加工が必要 | 比較的容易 |
費用 | 本体代+施工費 | 本体代のみ |
どちらも景観を意識したスピーカーとして優れていますが、音響特性や設置の柔軟性、予算に応じて選ぶことが重要です。例えば空間全体に広がる音が必要であればシーリングスピーカー、特定のエリアをカバーしたい場合はコラムスピーカーが適しています。
2.シーリングスピーカーの選び方
シーリングスピーカーを選ぶ際には、空間の用途や音響の目的に応じて適切な製品を選定することが重要です。見た目の美しさだけでなく、音質や設置のしやすさなども考慮する必要があります。
ここでは、シーリングスピーカーの選び方のポイントについて解説します。
設置場所に応じた選び方
シーリングスピーカーを選ぶ際には、設置場所の特性を把握することが重要です。
まず天井の構造を確認しましょう。
木造の天井は設置が比較的容易ですが、コンクリートの天井では専門業者による穴開け作業が必要になる場合や、埋め込みではない方法で設置しなければならない場合もあります。
また天井裏に十分なスペースがあるか、梁や配線が妨げにならないかもチェックが必要です。
空間の広さや形状も選定のポイントです。広い空間では複数のスピーカーを均等に配置して音響ムラを防ぐ必要があり、また狭い空間では少ない台数でも十分な音響効果が得られるため、コスト削減にもつながります。
さらに浴室やキッチンなど湿度の高い環境や半屋外では、防水・防塵性能を備えた製品を選ぶことでスピーカーの寿命を延ばし、最適な音響効果を引き出せます。
音質とデザインのバランスを考える
シーリングスピーカーの選定には、音質とデザインのバランスを取ることも欠かせません。
スピーカーの音質は、主にスピーカーユニットの性能や素材によって決まります。音楽鑑賞が目的の場合は、高音から低音まで幅広く再現できるバランスの良いモデルを選ぶと良いでしょう。一方会議室や店舗でのアナウンス用途には、中音域が明瞭で声がはっきり聞こえる製品が適しています。
またデザイン性も選定の重要なポイントです。シーリングスピーカーは目立たない設計が多いですが、スピーカーカバーの形状や色によって空間の印象が変わることがあります。空間全体のインテリアデザインに合わせて選ぶことで、音響機器が美観を損なうことを防ぎます。
3.シーリングスピーカーは自分でも天井につけられるのか
シーリングスピーカーを導入する際、「自分で取り付けることは可能なのか?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。結論から言うと、取り付け自体はDIYで可能な場合もありますが、天井の構造や設置に必要な技術を考慮すると、専門業者に依頼する方が安全で確実です。
そこでここでは、シーリングスピーカーを自分で取り付ける方法とその注意点、そして業者に依頼するメリットについて解説します。
DIYでの取り付け方法と注意点
シーリングスピーカーの取り付けの主な作業の流れは、天井に穴を開けてスピーカーを固定し、内部に配線を通すことです。
まずはじめに、設置するスピーカーのサイズに合わせて天井に正確な穴を開ける必要があります。
この際天井裏に梁や配線が通っていないかを確認し、障害物がない位置を選定することが重要です。
次にスピーカーを取り付けるためのブラケットや固定具を天井に設置し、最後にスピーカーを配線につないでビスで固定して設置が完了します。
ただしDIYでの取り付けにはいくつかのリスクがあります。特に天井に穴を開ける作業は、位置がずれると設置不良や建物へのダメージにつながる可能性があります。また電気配線の作業には専門知識が必要で、不適切な接続は故障や火災の原因になることもあります。さらに防音や振動の対策が不十分だと、スピーカーの性能を十分に発揮できない場合があります。
業者に依頼するメリット
DIYでの取り付けによるリスクを回避するため、多くの人が専門業者に取り付けを依頼しています。
業者に依頼する最大のメリットは、施工が確実で安全である点です。
プロフェッショナルな業者は天井の構造や設置環境に応じて最適な方法を提案し、スピーカーの性能を最大限に引き出す設置を行います。また配線や取り付け作業に必要な特殊な工具を揃えているため、効率的かつ美しい仕上がりが期待できます。
さらに業者に依頼することで、設置後のサポートやメンテナンスを受けられる点も大きな利点です。
特に音響バランスの調整や長期使用による劣化部分の修理など、専門的な対応が必要な場合でも安心して任せることができます。
時間や手間を節約しつつ確実な仕上がりを求めるなら、業者への依頼が最善の選択と言えるでしょう。
4.シーリングスピーカーのおすすめ3選
シーリングスピーカーを選ぶ際には、製品の性能やデザイン、そして用途に合わせた選択が重要です。市場にはさまざまなメーカーの製品があり、それぞれ独自の特徴を持っています。
おすすめ①:JBL STUDIO28IC
引用:JBL公式HP
おすすめポイント
・部屋全体に行き渡る優れた音響特性
・天井の構造にシームレスに溶け込むデザイン
・簡単に設置可能な頑丈かつ信頼できる設計
JBL STUDIO28ICは、卓越した音響性能と美しいデザインを兼ね備えたプレミアムラウドスピーカーです。
PolyPlas®ウーファーコーンとCMMD®ライトツイーターにより、歪みの少ない精密なサウンド再生を実現。さらに回転式アジャスタブルレベルツイーターを搭載し、どんな部屋でも音響条件を最適化します。特許取得のHDIウェーブガイドにより、どの位置からでもシネマクオリティのサウンドを楽しめます。
塗装可能なゼロベゼルデザインで、空間に溶け込む美しさも魅力です。頑丈なXL-2ブラケットで簡単に取り付け可能なため、カスタムホームシアターや全館オーディオに最適です。
インピーダンス | 8Ω |
推奨アンプ出力 | 100W |
周波数特性 | 30Hz~20kHz |
ラウドスピーカー感度 | 88dB 2.83V@1m |
低域特性ドライバーサイズと素材 | 8インチPolyplas®ウーファー |
高域特性ドライバーサイズと素材 | 1インチCMMD®回転式ライトツイーター |
高周波コントロール | +/-3dB |
寸法 | カットアウト244mm グリル仕上げ272mm 埋め込み132mm |
対応できる壁素材の厚さ | 12mm~51mm |
おすすめ②:Panasonic WS-TN10
おすすめポイント
・3段階の入力切換が可能
・安全性を高める保護カバーを標準装備
・簡単で効率的な施工を実現
Panasonic WS-TN10は、機能性と安全性を兼ね備えた天井埋め込み型のスピーカーです。
1W、3W、6Wの3段階に入力切換が可能で、音響環境に応じた調整が簡単に行えます。さらにスピーカー保護カバーと基板保護カバーを標準装備しており、作業時の安全性を確保可能です。接続には即結端子を採用しており、リリースボタン付きでワンタッチ接続ができる構成になっています。N・R・COM各3P端子も備えており、送り配線や分岐接続も簡単に行えます。また12cmスプリングキャッチ式の設計により、スムーズな天井への埋め込みが可能です。
高機能で扱いやすいこのスピーカーは、オフィスや公共施設など幅広いシーンで活用いただけます。
定格入力 | 6W、3W、1W |
入力インピーダンス | 1.67kΩ、3.3kΩ、10kΩ |
出力音圧レベル | 94dB(1W/1m) |
アッテネーター (音量調節器) | 1W時:0dB、-3dB、-7dB、-∞ 3W時:0dB、-6dB、-10dB、-∞ 6W時:0dB、-9dB、-14dB、-∞ |
周波数特性 | 120Hz~15kHz |
天井穴加工径 | φ150mm〜160mm/板厚50mm(max) |
寸法 | 134mm(幅)x215.5mm(奥行)x88.5mm(内部高) |
質量 | 590g |
おすすめ③:オースミ電機 OE-233 II
引用: オースミ電機HP
おすすめポイント
・Lo/Hi切替機能を搭載したフルレンジスピーカー
・錆びにくい三層仕上げのジャージネット風金属ネット
・送り端子搭載で簡単結線
オースミ電機 OE-233 IIは、天井埋め込み型の160mmフルレンジスピーカです。
フルレンジのスタンダードモデルにLo/Hi切替機能を追加した高性能な製品です。錆びにくいジャージネット風金属ネットは、メッキ、プライマー、塗装の三層仕上げで、汚れが目立たず長期間美しい状態を保てます。送り端子を搭載しておりワンタッチで結線できるため、工事が効率的に行えます。
設置場所としては、ホテルやオフィスビル、共同住宅のBGMや館内放送、駅や空港、テーマパーク、学校、文化センターなどの公共施設の放送設備に最適です。
定格入力 | 5W(最大8W) |
公称インピーダンス | 8Ω(5W)/3.3kΩ(3W)・5kΩ(2W)・10kΩ(1W) |
出力音圧 | 91dB(1W/1m) |
再生周波数帯域 | 80Hz〜18kHz |
外形寸法 (W×H×D) | 本体:232×178×77mm グリル:φ230×13(D)mm |
質量 | 650g(本体)+150g(グリル) |
本体材質、グリル枠 | ABS樹脂 |
ネット | ラスメタルパンチング(メッキ+プライマー+塗装) |
5.シーリングスピーカーの導入事例
シーリングスピーカーはそのデザイン性と音響性能の高さから、さまざまな施設で採用されています。特に景観を重視する空間での導入事例が増えており、実際の活用例を見ることで、導入後のイメージをより具体的に描けるようになります。
ここでは具体的な導入事例として、在日イタリア大使館様と株式会社オズビジョン様での導入事例を紹介します。
導入例①: 在日イタリア大使館様
導入の背景
在日イタリア大使館様では、会議室「Casa del Design」をさまざまな用途で活用しています。通常の会議だけでなく、プレス発表やイタリアメーカー製品のプロモーションイベントなども行われるため、音響・映像設備には高いクオリティが求められました。またこのスペースは「デザインの家」という名の通り、美しい内装が特徴で、導入する機材が内装の景観を損なわないことが重要な課題でした。
この背景を踏まえ、天井に埋め込むことで目立たない「シーリングスピーカー」が採用されました。スピーカーの本体カラーは天井に合わせてシルバーを選定し、設備全体が空間デザインに調和するよう細部にまで配慮されています。
使用シーン
120インチの電動巻上式スクリーンと超短焦点プロジェクターを設置することで、大画面で鮮明な映像を投影する環境を整えました。これにより、参加者全員が視認性の高いプレゼンテーションを楽しむことが可能になりました。
また音響面では天井に埋め込まれた4台のシーリングスピーカーが、室内全体に均一な音を届け、クリアで快適な音声環境を提供しています。これらのスピーカーは天井の色に合わせたシルバーの本体カラーを採用し、内装に溶け込むようデザインされています。
導入効果
今回のシーリングスピーカー導入により、「Casa del Design」では内装美を保ちながら高性能な音響環境を実現しました。スピーカーを天井に埋め込むことで設備が目立たず、洗練された空間デザインがそのまま活かされています。音響面では、会議やイベントの内容が参加者全員にクリアに伝わり、快適なコミュニケーション環境が整いました。
また施工には7日間を要しましたが、 機材を一箇所に集約したシステムラックの設置により操作性が向上し、機器の管理が簡素化されました。
導入例②:株式会社オズビジョン様
導入の背景
オフィス移転に伴い、 新オフィスでの業務効率を高めるだけでなく、従業員が快適に働ける空間を創ることが課題でした。また移転先オフィスの内装デザインは白色を基調とした洗練された印象であるため、導入する音響設備や映像機器がその美観を損なわないことが求められました。この課題に応じて、デザイン性と機能性を両立する機器の選定が進められました。
プロジェクターやスピーカーの色調を内装に合わせて白色に統一することで、設備が視覚的に目立たないよう配慮されています。これにより、空間全体の統一感が保たれた状態で、音響・映像環境が整備されました。
使用シーン
今回の導入では、1階の執務室エリアと2階のオフィスにそれぞれプロジェクターと収納式スクリーンが設置されました。プロジェクターには7000lmのレーザー光源モデルが採用され、比較的明るい環境でも鮮やかな映像表示が可能です。これにより、会議やプレゼンテーションがスムーズに進行できる環境が整備されました。
また1階と2階の両方に共通で、天井から吊り下げるタイプのスピーカーが設置されました。このスピーカーはBGMの再生やマイク音声の拡声に対応しており、日常の業務環境だけでなく、社内イベントや特別なプレゼンテーションの際にも活用されています。オフィス全体に心地よい音響が広がり、業務効率や集中力を高める効果も期待されています。
導入効果
新しい映像音響設備の導入により、新オフィスは機能性とデザイン性を兼ね備えた空間に生まれ変わりました。プロジェクターとスクリーンの設置により、会議やプレゼンテーションの視認性が向上し、スムーズな情報共有が可能になり、また天井から吊り下げるスピーカーはオフィス内全体に均一な音響を提供し、従業員の快適性を向上させています。
さらに施工期間が約3日間という短期間で完了した点も評価されています。移転に伴う業務への影響を最小限に抑えながら、新たな音響・映像環境を整えられたことは、迅速かつ効果的な音響機器導入プロジェクトの成功例といえるでしょう。
6.まとめ
シーリングスピーカーは、景観を損なわずに高い音響性能を提供する優れた音響機器です。天井に埋め込む設計により空間の美観を保ちながら、広い範囲に均一な音響を届けることができます。
シーリングスピーカーを選定する際には、設置場所や用途、予算に応じた検討が重要であり、適切な製品を選ぶことで満足度の高い導入が可能です。また取り付けについては、DIYでの取り付けも選択肢の一つですが、天井構造や配線作業のリスクを考慮すると、専門業者に依頼する方が確実です。
シーリングスピーカー導入を検討する際には、実際の導入事例を参考にすることをおすすめします。本記事内でも在日イタリア大使館様と株式会社オズビジョン様の導入事例を紹介していますが、さらに詳しい内容を知りたい方は、AVシステム導入事例 エージーエーコーポレーションをご参照ください。具体的な事例をご覧いただくことで、導入のヒントを得られるはずです。ぜひ参考にしてください。