オンライン配信のやり方と必要な機材

インターネットを活用した経営戦略は年々重要性を増していましたが、2020年以降のコロナ禍によって拍車がかかったと言って良いでしょう。企業のオンライン配信はビジネスコンテンツとしての注目度が高まり、ユーザー・ビジネスマン・求職者など様々な層が視聴しています。今回はこれからオンライン配信に着手する企業に向けた、配信のやり方や必要機材について解説していきます。

1. 必要機材を揃える   

オンライン配信を行うためには、まず必要な機材を一式揃える必要があります。実際に必要となる機材の種類や数は、どのようなスタイルでオンライン配信を行うかによってまちまちです。以下は一般的なスタイルでオンライン配信を行うことを想定した上で、最低限の拡張性を確保した場合の機材となります。

#PC

ノートパソコン

PCのスペックは処理速度に直結するため、安定してクオリティの高い配信を提供するためにはある程度の水準をクリアしているものを用意しましょう。具体的には「Core i(またはRyzen) 5相当のCPU」「16GB以上のメモリ」の2点は押さえておきたいところです。ゲームのプレイ映像などをリアルタイムで配信する場合には、高性能なグラフィックボードも搭載しておく必要があります。これらの条件を満たすにはデスクトップであれば10~15万円程度、ノートPCの場合は15~20万円前後を予算として見積もっておきましょう。

#カメラ

ディスプレイやノートPCの機種によってはカメラが標準搭載されている場合もありますが、撮影の柔軟性を考慮して別途カメラを用意するのがおすすめです。さほど高い画質を必要とせず移りこむ被写体が1名の場合はWebカメラで事足りるケースもあります。Webカメラであれば8000円前後、ビデオカメラは5~10万円前後を予算の目安にすると良いでしょう。

#キャプチャーボード

外部カメラの映像をPCに取り込むのに必要となるのがキャプチャーボードです。カメラによってはPCと直接接続出来るものもあるので、ケースバイケースで購入を判断してください。一般的にはUSBケーブルを用いてPCとキャプチャーデバイスを接続します。また、複数台のカメラを使用するオンライン配信ではキャプチャーボードとは別に、カメラアングルを切り替えるためのスイッチャーが必要です。キャプチャーボードは2~3万円程度の予算で必要最低限のクオリティが確保出来ると考えておきましょう。スイッチャーに関しては接続するカメラの数によりますが、小規模なオンライン配信であれば概ね4~5万円の予算があると安心です。

#マイク

マイク

オンライン配信では集音用のマイクを別途用意するのが一般的です。ピンマイク・インカム型・手持ちマイクなど様々なタイプがあるので、配信スタイルに適した形状のものをチョイスしてください。また、マイクには大きく分けて「ダイナミックマイク」と「コンデンサーマイク」の2種類が存在します。前者は必要十分な音質と頑丈さが特徴で、後者はより繊細な音質で集音出来る一方でファンタム電源と呼ばれる専用電源が必要です。予算としてはダイナミックマイクなら1本あたり12000円前後、コンデンサーマイクなら2万円前後を目安に考えておきましょう。

#オーディオインターフェース

マイクの音をPCに取り込むには、オーディオインターフェースを使用します。一般的なオーディオインターフェースに接続可能なマイクは1~2本、多くても4本程度です。8本以上接続可能な製品もありますが、接続数が増えるようであればミキサーの購入を検討しましょう。ミキサーは複数の音声入力のバランスを取り、加工することも可能な機材です。ただし、ミキサー単体ではマイクの音声をPCに送ることが出来ないので、オーディオインターフェースと併用するかオーディオインターフェース機能が備わったミキサーを用意する必要があります。オーディオインターフェースは音質や音声の安定性に大きく影響するので安くても3万円前後、出来れば6万円以上のクラスを用意しておきたいところです。ミキサーについても基本的には同じ程度の予算ですが、配信規模が大きくなれば10万円以上の製品が必要になるケースもあります。           

2. オンライン配信を誰に届けたいか   

オンライン配信はただ何となく放送しても効果的ではありません。大切なのは「誰に」「何を」「どのような形で」届けるのかという目的をはっきりさせておくことです

#ターゲット

自社のオンライン配信の内容は、誰をターゲットとしているかによって大きく異なってきます。例えば潜在顧客を取り込みたいのであれば自社製品・サービスの良さを知ってもらうための分かりやすいプロモーションが重要になるでしょう。既存顧客がターゲットの場合は製品やサービスについて詳しく掘り下げたり、裏話のような貴重なエピソードを盛り込んだりすることで効果的に興味関心を惹き付けられます。

#ゴール

視聴者がそのオンライン配信を見たことで「どのようなアクションを起こしてほしいか」というゴールを設定しておくことも重要となります。例えば配信視聴後に「商品やサービスについて問い合わせて欲しい」「自社サイトを訪問して欲しい」「SNSアカウントをフォローして欲しい」など、ゴールラインは様々です。ゴールを設定することで配信内容が固まる他、配信後の問い合わせ数やアクセス数を分析して効果測定を正確に行えるようになります。

#配信スタイル

配信内容が見えてきたところで、今度は具体的にどのようなスタイルで配信するかを決めます。例えば出演者は何名なのか、カメラやマイクは何台使用するのか、進行の段取りはどうするのかといったポイントです。この段階ではオンライン配信の規模も固まることになるので、自ずと必要になる予算も見えてきます。   

3. オンライン配信方法は2種類           

オンライン配信には大きく分けて以下の2種類のやり方があるので、配信内容やスタイルに応じて上手く使い分けるようにしましょう。

#ライブ配信

ライブ配信は撮影している映像や音声をリアルタイムでインターネット上に公開するスタイルです。配信者側・視聴者側ともに臨場感のある体験が醍醐味で、チャットやアンケートを通じた双方向コミュニケーションが可能というメリットがあります。視聴者の反応をチェックしながら臨機応変に配信を進行していくことも出来るでしょう。ただし映像・音声のトラブル、ネット回線の状態には細心の注意を払う必要があります。臨場感を味わってもらうためには、視聴者にもスケジュールを調整してもらう必要がある点にも注意してください。配信内容を残すだけであれば、当日の配信をアーカイブとして公開するのも1つの選択肢となります。

#オンデマンド配信

事前に収録した映像と音声をインターネットで公開するのがオンデマンド配信です。納得のいくクオリティまで動画を仕上げることが可能であり、様々なエフェクトで演出を施しやすいというメリットがあります。視聴者は公開期間中であれば好きなタイミングで配信を見られるので、幅広い層にアプローチ出来る点も魅力です。デメリットとしては視聴者との双方向コミュニケーションが出来ないため、興味関心を惹き付けるために配信内容や進行方法に工夫が必要であるということが挙げられます。視聴者のニーズを汲み取るためにはしっかり事前調査を行うのも重要です。      

4. オンライン配信プラットフォームを選ぶ     

オンライン配信のプラットフォームは数多く提供されていますが、特に人気なのは次の3つです。また、クローズド系・オープンソース系プラットフォームの違いについても理解を深めておきましょう。

#クローズド系・オープンソース系の違い

クローズド系プラットフォームは配信者が招待した参加者のみが視聴可能であり、秘匿性の高さが特徴的です。一般的には社員研修や会員向けサービスとしての配信に用いられます。これに対してオープンソース系は検索エンジンやURLから誰でも視聴出来る配信に用いられるプラットフォームです。企業説明会や公開セミナーなど不特定多数に向けた配信で使用します。

#YouTubeのオンライン配信概要

世界最大手の動画配信プラットフォームであるYoutubeは、配信の視聴者数に制限が設けられていないという点が大きな特徴です。シンプルながらも使い勝手の良いインターフェースとなっており、チャンネル登録者数1000人を超えるとモバイル端末からの配信も可能になります。なお、12時間を超える配信はアーカイブとして公開出来ない仕様になっているので注意しましょう。

#ZOOMのオンライン配信概要

ZOOMはビジネス向けビデオ会議ツールとして普及しましたが、ウェビナーオプションを追加することで、500~10000名に向けたウェビナー配信が可能になります。視聴権限・発言権の管理が出来るようになっているため、比較的クローズドな用途にも対応しています。

#Teamsのオンライン配信概要

マイクロソフト社のTeamsは同社のオフィス製品との親和性が高く、画面上に資料を展開して共同作業することが可能です。共同作業は最大300人、ウェビナーは最大1000人、視聴するだけであれば最大1万人まで対応しています。Microsoft 365 Enterpriseの有料版に加入していればすぐに利用可能です。     

5. オンライン配信や録画時の注意点      

配信でトラブルを起こさないようにするためには、事前にしっかりとリハーサルしておくことが大切です。配信に使用する回線は光ファイバーのように十分な速度を確保し、可能な限り安定した環境を整えてください。カメラやマイクが音・映像を正確に拾えるように光量や環境音にも気を配りましょう。配信の集客では事前の告知が大きく成否を分けます。配信本番日から逆算し、事前登録や視聴用URL展開のスケジュール管理に注意しましょう。

当日のタイムテーブルはタイトにしないのがおすすめです。ライブ配信の場合は途中で5分~10分程度の休憩を挟む、終了時刻の後には撤収時間を確保するなどしましょう。配信に出演してもらうゲストが居る場合は、事前に入念な打ち合わせを行ってください。意識のすり合わせが十分でないと、せっかく招いたゲストに話してもらいたいことをアピールしてもらえないことがあります。なお、準備万端で本番を迎えても予期せぬトラブルが起きる可能性はゼロではありません。本番用のプラットフォーム以外にも配信ツールを用意しマイクやカメラの予備を確保しておくと安心です。      

6. オンライン配信でビジネスチャンスを創り出そう 

企業のオンライン配信は社内向け・社外向けを問わず様々なシーンで活用されています。専門的な機材や知識が必要ですが、ツールがどんどん使いやすくなり、誰でもチャレンジしやすくなりました。まずは必要最低限の機材を揃えた上で、スモールスタートで運用を開始してみるのもおすすめです。IT化が加速する現代ビジネスシーンを生き抜くために、オンライン配信でビジネスチャンスを創り出していきましょう。