デジタルミキサーとは?|音響システムの中枢

音響システムの重要な要となるのが、ミキサーという機材です。

ミキサーとは

音響システムの中には色々な音声ソースがあります。複数のマイク、CD、スマホやPCからの音声出力etc。
また、マイクを使って話す人たちもそれぞれ声量や声質が異なります。
そういった異なる音声を一旦集約し、調整して最終的にスピーカーから出す音声を決めるのがミキサーの役割です。
楽曲制作やコンサートなどでは、楽器ごとに音量や音質を整え、それぞれの楽器が曲としてバランスよく聴けるようにします。これをミキシングと言います。

様々な音響機器が混在するまさに音響システムの要といえます。

ここからは、ミキサーで調整できることを具体的に説明していきます。

音量調整(GAINとLEVEL)

ミキサーで音量を調整するのが主にGAINとLEVELです。
それぞれ役割が異なります。

GAIN(ゲイン)

GAINはミキサーに入力される信号の量を調整します。
ミキサーに入力される信号は、ミキサーに接続されている音響機器、楽器によってそれぞれ違うので、まずは上流でそれらの信号を均一にするのがセオリーです。
信号の量を調整しているので、上げすぎるとノイズや歪みが発生し、聞きにくい音になるので、適切な調節が必要になります。

LEVEL(レベル)

GAINで均した音声を最適なバランスに整え、最終的にスピーカーに送る音声バランスを決めるのがレベルです。

例えば、CDでBGMを流しながらスピーチをする場合を考えてみましょう。
BGMとマイクの音声が同じボリューム感で流れていたら、肝心のスピーチが聞こえにくくなりますよね。そのような場合に、BGMを少し下げるような調整をするのがLEVELです。
このとき、GAINで音声を均一にしていないと、調整が煩雑になってしまいます。

音質補正(EQ)

EQ(イコライザー)は音の質感を帯域ごとにブーストしたりカットしたりするセクションです。

大抵High、Middle、Lowに分かれており、大きなミキサーだと250Hz、500Hz、1kHz、2kHzと数値で細かく分かれているものもあります。

音は大きく高音域(High)、中音域(Mid)、低音域(Low)に分けることができ、それぞれを調整することで、音の聞こえ方が全く異なります。

高音域は音のきらびやかさに大きく影響を及ぼします。
上げれば音の輪郭がはっきりし、抜けが良くなるので、色々な音声が混ざっていても聞こえやすくなります。
ただし上げすぎると、耳に刺さる不快な音になります。

低音域は音の迫力に影響すると言えます。
上げると「ドン」という迫力が出ますが、上げすぎると音がぼやけて他の音に埋もれてしまいます。

間の中音域は音の中身に影響します。
中音域がないと中身のないすかすかした音に聞こえます。適度に中音域を足すことでしっかりとした音になります。ただし上げすぎるとぼやけたり、耳を圧迫するような深いな音になるので注意です。

ミキサーではこれらをうまく調整して、複数の音をまとめたり、キレイに棲み分けたりすることで、聞きやすいを作ります。

その他のツマミ

PAN

音を左右に振り分けることができます。

皆さんが普段聞いている音楽は、実はパートごとに左右に振り分けられています。
仮に全部ど真ん中から流れているとのっぺりとした味気ない音になります。
楽器の役割ごとに音が出る位置を変えることで、立体的で没入感のある音に仕上がります。

トークなどでも、話者の立ち位置に合わせて音を振り分けることで、臨場感を演出することもできます。

Master

ミキサーで調整した全体の音を、最終的にどれくらいの音量で出すかを決めているのがMasterです。
Masterを0にしていれば音は出ません。

ミキサーの種類

アナログミキサー

音響ミキサーとして一般的に普及しているのがアナログミキサーです。

比較的安価な機種も多いので、レンタルスタジオなどにも常設されています。

音質の調整はツマミやフェーダーを使って物理操作する設計になっており、信号の流れも分かりやすい配置になっています。

デジタルミキサー

近年様々なシーンで広がっているのがデジタルミキサーです。

音声信号を内部でデジタル信号に変換して処理するので、アナログミキサーに比べて内蔵している機能が豊富なのが特徴です。
アナログミキサーに比べて物理操作子が少ない傾向があるので、筐体がコンパクトなものも多いです。ただし、その分限られた物理操作子でたくさんの機能を扱うので、知識と慣れが必要です。

また、全体的にアナログミキサーよりも高価です。

デジタルミキサーの特徴

設定を保存して瞬時に呼び出せる

先述の通り、ミキサーは様々なパラメータを調整することで音を整えます。
イベントのような場面展開がたくさんあるシチュエーションでは、シーンごとにBGMとマイクの音量バランスなどを細かく適切なバランスにする必要があります。そんなとき、毎回たくさんのツマミをいじって調整するのは至難の業です。
デジタルミキサーはセッティングを保存することができるので、例えばオープニングはセッティングA、トーク中はこのセッティングB、VTR放映中はセッティングCというように保存しておけば、ワンタッチで瞬時に呼び出すことができるのです。

高性能なプロセッシングが内蔵されている

アナログミキサーに内蔵されているイコライザーは簡易的なものが多く、より細かい音作りをするためには別途高性能なイコライザーを接続する必要があります。
また、リバーブやディレイなどの音響効果を付加する場合もそれぞれ専用の機材を用意しなければなりません。

デジタルミキサーは、デジタル処理をしているためこれらの細かいイコライザーや音響効果を全て内蔵しており、ミキサー一台で音作りを完結させることができます。
したがって、ミキサー本体はデジタルの方が高価になりますが、音響トータルで考えるとデジタルの方が安くなることもあります。

おすすめのデジタルミキサー

コストパフォーマンスで選ぶお手軽なデジタルミキサー

ZOOM LIVE TRAK シリーズ

比較的安価ながら多機能かつコンパクトなデジタルミキサーです。

ポッドキャスト配信からライブパフォーマンスまで対応できる汎用性が魅力的で、誰でも使いやすい設計になっています。
ZOOM社はミキサーの他にもコストパフォーマンスに優れた様々なオーディオ機器を展開しています。

ZOOM LIVE TRAK L-8

https://zoomcorp.com/ja/jp/digital-mixer-multi-track-recorders/digital-mixer-recorders/LIVETRAK-L-8/

入力8(MIC/LINE:6 LINE:2)
出力4系統
内蔵エフェクトEQ、8種のセンドエフェクト
価格¥44,000
※公式HP参照

 

ZOOM LIVE TRAK L-12

https://zoomcorp.com/ja/jp/digital-mixer-multi-track-recorders/digital-mixer-recorders/livetrak-l-12/

入力10
出力5系統
内蔵エフェクトEQ、16種類のセンドエフェクト
価格¥67,000
※公式HP参照

ワンランク上の本格デジタルミキサー

YAMAHA DM3

https://jp.yamaha.com/products/proaudio/mixers/dm3/index.html

入力16
出力8
内蔵エフェクト18エフェクト、グラフィックEQ
価格¥286,000
※公式HP参照

数々のミキサーの名機を発売してきたヤマハの最新デジタルミキサーが「DM3」です。

ライブ、配信、レコーディング、音楽制作全てプロレベルでこなす高音質・高性能なコンソールを、320mm × 140mm × 455mmという非常にコンパクトな筐体にまとめ上げました。

標準モデルの「DM3 Standard」は2023年4/12発売。
Dante(イーサネットケーブルでデジタルオーディオをやりとりする規格)搭載の「DM3」は2023年9月発売予定となっています。

業界のスタンダード!プロユースのデジタルミキサー

YAMAHA QL Series

https://jp.yamaha.com/products/proaudio/mixers/ql_series/index.html

デジタルミキサーといえばYAMAHAと言われるくらいに、プロユースのデジタルミキサーとして業界で広いシェアを誇るQLシリーズ。

YAMAHA QL1

入力16
出力8
内蔵エフェクトEQ、コンプレッサー、46種類の空間系エフェクト、8種類のインサートエフェクト
価格オープンプライス

YAMAHA QL5

入力32
出力16
内蔵エフェクトEQ、コンプレッサー、46種類の空間系エフェクト、8種類のインサートエフェクト
価格オープンプライス